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2026年3月期から適用。人的資本の開示拡充の概要と実務への影響

【2026年3月期適用】人的資本開示の拡充概要と実務への影響

2026年1月9日

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2026年3月期より、人的資本の開示は新たなフェーズに突入します。金融庁の改正により、単なる数値の羅列ではなく、「経営戦略と連動した給与決定方針」や「前年比の賃上げ率」の開示が実質的に義務化されます。

本記事では、この最新規制を乗り越え、投資家から「成長企業」と評価されるための、データに基づいた人的資本経営の実践手法を詳説します。

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目次

2026年3月期からの開示拡充と義務化動向

2026年3月期以降の有価証券報告書では、新たに以下の項目の記載が求められる見通しです(2025年11月金融庁改正府令案)。

改正項目具体的な内容経営・実務への影響
企業戦略との統合経営戦略と人材戦略の一体化組織ガバナンスの評価に直結
給与決定方針報酬決定のロジック明文化評価制度の透明性と納得感の向上
給与増減率前年比増減率(%)の開示賃上げ姿勢と投資効率の可視化

出典:金融庁:企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)

企業戦略と人材戦略の「統合開示」

2026年3月期からは、これまで報告書のあちこちに分散していた「従業員の状況」や「サステナビリティの取組」といった項目が、経営戦略の枠組みの中に再編されます。

  • 構造の変化
    単なるデータの羅列ではなく、「中長期的な企業価値向上のために、どのような人材ポートフォリオが必要か」という問いに対する回答が求められます。
  • 実務上のポイント
    DX戦略を掲げる企業であれば、単に「IT研修を実施した」と書くのではなく、「DXによる売上構成比を30%に引き上げるため、IT専門人材を現状の1.5倍に拡充し、そのための採用・育成・文化醸成をこのようにパッケージ化した」という、「一本の筋が通ったストーリー」が必要です。
  • 投資家の視点
    投資家は「戦略の整合性」を注視します。事業目標と人事KPIが乖離している企業は、経営のガバナンスが機能していないと判断されるリスクが生じます。

平均年間給与の「前年比増減率」

これまでは「平均給与額」というスナップショット(点)の開示でしたが、2026年からは「対前事業年度比(%)」というモメンタム(動態)の開示が義務化されます。

  • 改正の背景
    政府が進める「構造的な賃上げ」と連動し、企業が一時的ではなく「継続的に」人材への分配を強化しているかを可視化することが狙いです。
  • 戦略的意味合い
    この数値は、単なる「給与の高さ」を競うものではありません。事業成長に伴って従業員への還元が適切に行われているか、あるいは先行投資として賃上げを行い、それが将来の生産性向上に寄与しているかという**「人材投資の持続可能性」**を証明する指標となります。
  • リスクと機会
    増減率がマイナス、あるいは停滞している場合、その合理的な理由(例:大量採用による平均年齢の低下、構造改革のプロセス等)を説明できなければ、人材流出や採用競争力の低下を招く「警告信号」として機能してしまいます。

給与・報酬決定方針の「透明化」

2026年からの新設項目として最も注目されるのが、「従業員の給与・報酬をどのような考え方で決定しているか」という方針の明文化です。

  • 情報の統合
    これまで役員報酬に限定されていたような「決定プロセス」や「業績連動の仕組み」の開示が、一般従業員層にも拡大されます。また、ストックオプションや譲渡制限付株式(RS)といった「非金銭的報酬」の情報も、一元的に理解できるよう整理されます。
  • 「トータル・リワード」の概念
    企業は「月給」だけでなく、賞与、福利厚生、株式報酬、そしてリスキリングの機会といった「総報酬(トータル・リワード)」の観点から、自社の処遇の魅力を語る必要があります。
  • 実務上のインパクト
    成果主義への移行、職務給(ジョブ型)の導入、市場水準(ベンチマーク)に基づいた改定など、「なぜその金額を支払うのか」というロジックの公開が求められます。これにより、社外の優秀層へのアピールになる一方で、社内に対しても「納得感のある評価制度」の整備が急務となります。

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人的資本の基礎知識とISO 30414の活用

2023年3月期の義務化以降、日本企業の多くは「開示すること自体」に注力してきましたが、現在はその「質」が厳しく問われる第2フェーズへと移行しています。2026年の拡充案に対応するためにも、改めて基盤となる国際基準と国内指針を再確認する必要があります。

ISO 30414と有価証券報告書への記載義務範囲

2023年3月期決算より、大手企業を対象に有価証券報告書内での「人的資本」に関する情報の記載が義務化されました。 具体的には、人材育成方針や社内環境整備方針、そして「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」「男女間賃金格差」の3指標が必須開示項目となっています。

グローバル基準では、世界初の人的資本情報開示ガイドラインである「ISO 30414」がスタンダードとなっており、11領域58項目にわたる詳細な指標が定義されています。2026年からの「報酬方針」の開示においても、ISO 30414が定める「報酬の公正性」や「リーダーシップ」の指標を活用することで、客観性の高い説明が可能になります。

人的資本開示の「7分野19項目」による網羅性確保

政府の指針で示されている「7分野19項目」は、開示を網羅的に進めるための共通言語です。2026年からの新基準でも、これらの項目をバラバラに報告するのではなく、自社の強みに合わせて「再構成」することが求められます。

分野主な項目(全19項目)
1. 育成リーダーシップ、育成時間、スキルアップ投資
2. エンゲージメント従業員満足度、組織文化、推奨度
3. 流動性採用、離職率、内部登用
4. ダイバーシティ男女比率、多様性、包摂性
5. 健康・安全労働災害、メンタルヘルス、ウェルビーイング
6. 労働慣行コンプライアンス、児童労働防止、結社の自由
7. ガバナンス取締役会の多様性、役員報酬、リスク管理

人的資本開示の7分野19項目は下記の記事でも詳しく解説しております。

数値報告から経営戦略との連動への転換

初期段階で見られた単一指標の羅列だけでは、もはや投資家や市場の期待に応えることはできません。

86%の企業が抱える「戦略と投資の乖離」

実態調査によると、8割以上の企業が「経営戦略に合わせた人材要件の言語化」に苦慮しています。有報に記載する「方針」と、現場の「実態(保有スキル)」が噛み合っていないことが、開示の形骸化を招く最大の原因です。

2026年からの給与増減率や報酬方針の開示は、まさにこの「実態と戦略のズレ」を白日の下にさらすものとなります。

出典:リクルートマネジメントソリューションズ:人的資本経営の推進に関する実態調査2025

自社の競争優位性に直結する項目の選定

19項目すべてを均等に開示する必要はありません。自社の事業モデルにおいて、どの要素が価値創造の源泉なのかを特定することが重要です。

例えば、IT企業であれば「1. 育成(スキル)」、金融・インフラであれば「7. ガバナンス」や「2. エンゲージメント」が核となります。2026年からの新基準を追い風に、「なぜ我が社はこの人材投資に重点を置くのか」を語るストーリーテリングが、時価総額を左右する時代になっています。

人的資本を放置する企業の経営リスク

PBR1倍割れと採用競合に対する「人材獲得能力」の低下

人的資本への投資を怠ることは、資本市場における評価(PBR)の低迷と、労働市場における競争力の喪失を直結させます。現在、投資家は「人材への投資が将来の利益を生む」という非財務情報の可視化を重視しており、情報開示が不十分な企業は「持続可能性が低い」と見なされ、株価純資産倍率(PBR)が1倍を割り込む主要因となっています。

また、実務上の最大リスクは「採用競争力」の致命的な低下です。2040年には1,100万人の労働力が不足するという試算があり、人的資本の魅力をデータで示せない企業は、優秀な人材から「選ばれない」だけでなく、既存社員の流出も防げなくなります。人的資本の放置は、資本市場での過小評価と、労働市場での孤立という「二重の衰退」を招く経営リスクそのものです。

出典:リクルートワークス研究所:2040年労働シミュレーション

従業員エンゲージメント低下による年間損失額の試算

従業員の意欲低下は、営業利益を直接削り取る「目に見えない負債」です。米ギャラップ社の2024年調査では、日本企業の「熱意あふれる社員」はわずか6%と世界最低水準であり、意欲の低い社員による生産性低下は1人あたり年収の約3分の1の損失を生むと試算されています。

さらに離職が発生すれば、採用・教育費や戦力化までの空白期間を含め、年収の0.5倍〜2倍のコストが消失します。年収600万円の対象者が100人いれば年間2億円の利益が失われる計算となり、2026年3月期からの新基準では、この「負のコスト」をいかに価値創出へ転換できるかが、経営ガバナンスの重要指標となります。

成長企業として評価されるための「3つの実践手法」

2026年3月期からの新基準をクリアし、投資家から「成長企業」と評価されるためには、単なるデータ収集を超えた以下の3つの実践的手法が鍵となります。

1.経営目標から逆算した「人材ポートフォリオ」の定義

まず取り組むべきは、中期経営計画等のビジネスゴールを達成するために「どの部署に、どのようなスキルを持つ人材が何人必要か」を定義することです。

  • 手法
    既存の「役職」ベースの管理から、具体的な「保有スキル」ベースの管理へ移行します。これにより、有価証券報告書の「人材育成方針」において、戦略と投資の整合性を論理的に説明可能になります。

2.スキルデータの可視化による「社内リソースの最適配置」

賃上げを「コスト」ではなく「投資」として証明するには、従業員のスキル向上を即座に「適材適所の配置」に繋げる仕組みが必要です。

  • 手法
    社内資産シェア・プラットフォーム等を活用し、全従業員のスキル・経験をリアルタイムで可視化します。現場の「隠れた才能」を見つけ出し、戦略部門へ配置転換(マッチング)した実績を数値化することで、人的資本の流動性と投資対効果をエビデンスとして提示します。

3.「動的データ」を用いたリアルタイム・ガバナンス

年1回の定期調査ではなく、パルスサーベイや日々の活動データを活用し、組織の状態を「動的」に把握します。

  • 手法
    離職率やエンゲージメントの低下を「予兆」の段階で検知し、未然に防ぐプロセスを構築します。この「リスクを事前に抑え込む管理体制」そのものを開示することで、投資家に対し経営陣のガバナンス能力の高さを証明します。

2026年対応に向けた「データ収集チェックリスト」

2026年3月期からの新基準(統合開示・給与方針)に対応するには、人事部内の定型データだけでなく、「戦略と実態の繋がり」を証明する非定型データの収集が不可欠です。経営企画や現場と連携し、以下のデータが揃っているか確認してください。

  1. スキル・経験の可視化
    従業員が「今持っているスキル」をリアルタイムで把握できているか?
  2. マッチング実績
    スキルに基づいた配置転換(社内資産シェア)が何件行われたか?
  3. 賃上げの因果関係
    給与増減と、生産性やエンゲージメントの相関をグラフ化できるか?
  4. 報酬の比較データ
    自社の給与水準が市場(競合)に対してどの位置にあるか、エビデンスがあるか?

人的資本に関するFAQ

Q:開示することで競合に戦略を盗まれませんか?

A:手法の詳細は社外秘とし、あくまで「目指すべき方向性と進捗率」を開示するのが一般的です。むしろ、開示しないことによる不透明性のリスクの方が、資金調達や採用において致命的となります。

Q:人的資本投資のROIを算出する具体的な数式は?

A:一般的には「(付加価値額の変化 – 投資額) /投資額」を用いますが、短期的には「採用コストの削減額」や「離職防止による損失回避額」で算出することが実務的です。

Q:離職率が高い場合、正直に開示すべきですか?

A:はい。ただし数値だけでなく、その原因分析と、現在進行中の改善施策をセットで記述することがIRの鉄則です。

Q:中小企業でも取り組むメリットはありますか?

A:大いにあります。採用力で大手に劣る中小企業こそ、一人ひとりのスキルを可視化してマルチタスク化を進めることで、生産性を飛躍的に向上させることが可能です。

人的資本を企業の「資産」に変えるために

人的資本経営はもはや一過性のブームではなく、企業価値を定義する新しい共通言語となりました。

2026年3月期から始まる開示拡充の波を乗り越えるために重要なのは、単に報告書を作成することではありません。真の目的は、社内に眠る「スキル」や「経験」という見えない資産を可視化し、組織全体でシェア・活用する文化を築くことにあります。

カスタメディアの社内資産プラットフォームは、従業員の専門知識、時間、社内資産をデジタルで可視化し、最適にマッチング。人不足やリソースの無駄を解消し、学びの機会や副業・交流を促進する仕組みで、人的資本経営とウェルビーイングをシステム面から強力に支援します。

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