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要件定義におけるasisとtobeの徹底ガイド

【完全ガイド】As-Is/To-Beを要件定義で使うフレームワークと業務フローを解説!

2026年5月12日

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システム開発や業務改善のプロジェクトを進める際、「何を作るか」を正確に言語化できず、開発が始まってから認識のズレが判明して手戻りが発生した——そんな経験はないでしょうか。

As-Is To-Beフレームワークは、現状(As-Is)とあるべき姿(To-Be)を構造的に整理し、要件定義の精度を大きく高める手法です。この記事では、要件定義の場面でAs-Is To-Beフレームワークをどう使うか、ステップ・注意点・実践事例を交えて解説します。

目次

As-Is / To-Beのおさらい

システム開発や要件定義において、「現状(As-Is)」と「理想(To-Be)」を明確にすることは、プロジェクトを成功させるための必須工程です。

項目As-Is(アズ・イズ)To-Be(トゥー・ビー)
定義現状分析・今の姿あるべき姿・理想の姿
役割今のプロセスが「どうなっているか」を可視化改善後が「どうあるべきか」を定義
主な目的課題やボトルネックを特定するため最終目標と進むべき方向を明確にするため
要件定義での位置付け開発の「出発点」であり、土台となる開発の「ゴール」であり、仕様の基準となる
効果改善の必要性が共通認識になる関係者間での合意形成がスムーズになる

As-Is / To-Beの意味やテンプレートの書き方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

As-Is/To-Beのフレームワークが要件定義に欠かせない理由

要件定義は、システムや仕組みに「何をさせるか」を決めるプロセスです。この段階で曖昧さが残ると、開発後に「思っていたものと違う」という問題が起きやすくなります。

As-Is To-Beフレームワークは、この曖昧さを排除するための構造的なアプローチです。具体的には次のように機能します。

ステップ内容
As-Is(現状)の可視化現在の業務フロー・課題・ボトルネックを客観的に記述する
To-Be(あるべき姿)の設計目指すべき状態・業務フロー・達成指標を定義する
ギャップ分析As-IsとTo-Beの差分を洗い出し、解決すべき課題を特定する

重要なポイント: As-Is To-Beを「ただの現状整理」として使うだけでは不十分です。要件定義に接続するには、ギャップを「システムで解決すべきもの」「運用・組織で解決すべきもの」に仕分けるところまでが必要です。

As-Is To-Be フレームワークの実践ステップ

ステップ1:スコープの確定(分析対象の絞り込み)

最初に「どの業務プロセスを対象にするか」を明確にします。スコープを定めずに始めると、分析が発散して収拾がつかなくなります。

スコープ設定のチェックリスト:

  1. プロジェクトのゴール(例:受注処理時間を50%削減)を言語化する
  2. 対象業務の開始点と終了点を決める(例:「問合せ受付」から「請求書送付」まで)
  3. 関係する部署・担当者・システムを一覧化する

スコープは「狭すぎず、広すぎず」が原則です。部署をまたぐ業務の場合は、まず主要な業務フローに絞り、後続フェーズで周辺業務に拡張するアプローチが現実的です。

ステップ2:As-Is(現状)の記述

現状を記述する際は、「担当者の印象」ではなく「事実ベース」で記録することが重要です。

As-Is分析で収集すべき情報:

カテゴリ収集内容の例
業務フロー誰が・何を・いつ・どの順序で行うか
使用ツール既存システム、スプレッドシート、紙書類など
所要時間各タスクの平均処理時間・頻度
ボトルネック滞留・ミス・手戻りが発生しやすいポイント
属人化リスク特定の人にしかわからない暗黙知・非公式ルール

情報収集の方法:

  • 業務担当者へのヒアリング(1on1インタビュー)
  • 実際の業務を観察するシャドーイング
  • 既存の業務マニュアルや帳票の棚卸し
  • システムのログ・アクセス記録の分析

よくある落とし穴: 管理職へのヒアリングだけで現状を記述すると、「あるべき手順」が記録されてしまい、実態との乖離が生じます。現場担当者への直接ヒアリングを必ず組み合わせましょう。

ステップ3:To-Be(あるべき姿)の設計

To-Beは「なんとなく便利な姿」ではなく、ビジネス目標と直結した具体的な状態として定義します。

To-Be設計のフレーム:

【目標指標】 例:受注入力の担当者工数を月40時間→10時間に削減
【業務フロー】 例:システムがデータを自動入力し、担当者は確認・承認のみ
【必要な機能・仕組み】 例:外部APIとの連携、エラー検知の自動通知
【非機能要件】 例:応答速度、同時接続数、可用性

To-Be設計で陥りやすいパターン:

  • 理想論になりすぎる: 「すべて自動化」「ゼロミス」など非現実的な目標を設定してしまう
  • 現行踏襲になる: 現状に引っ張られて「少し改善した現在」をTo-Beと定義してしまう
  • 関係者間で合意されない: 経営層・現場・IT部門がそれぞれ異なるTo-Beを描いている

To-Beは「プロジェクトオーナーと現場担当者が同じ絵を描いている状態」で合意することが理想です。ワークショップ形式でTo-Beを共同設計するアプローチが有効です。

ステップ4:ギャップ分析と課題の構造化

As-IsとTo-Beが定義できたら、両者の差分を「ギャップ」として洗い出します。このギャップが、要件定義で対処すべき課題の母集団になります。

ギャップの分類方法:

ギャップの種類解決手段
システム機能の欠如システム開発・ツール導入
データ品質・構造の問題データ整備・マスタ統合
業務プロセスの非効率業務設計の見直し(BPR)
スキル・知識不足研修・マニュアル整備
組織・権限の問題組織設計・承認フローの変更

優先順位の付け方:

ギャップを洗い出したら、以下の2軸で優先順位をつけます。

  • 影響度(Impact): 解決したときにビジネス目標への貢献が大きいか
  • 実現可能性(Feasibility): 予算・期間・技術的制約の中で実現できるか

影響度が高く実現可能性も高いものを「フェーズ1」とし、影響度は高いが実現可能性が低いものは「中長期課題」として分離することで、スコープの肥大化を防げます。

ステップ5:要件定義書への接続

ギャップ分析の結果を、次のように要件定義書の各項目に接続します。

  1. 機能要件: システムが解決すべきギャップ→必要な機能・画面・データ項目
  2. 非機能要件: パフォーマンス・セキュリティ・可用性の基準
  3. スコープ外の定義: 今回のシステムで対応しない課題の明示(スコープクリープ防止)
  4. 成功基準: To-Beが達成されたと判断するためのKPI・測定方法

要件定義書にAs-IsとTo-Beを明示的に記載しておくことで、開発中に仕様の変更・追加が要求された際に「これはTo-Beの実現に必要か」という判断軸を持てるようになります。

要件定義でよく使われる関連フレームワークとの比較

As-Is To-Beフレームワーク以外にも、要件定義で活用できる手法があります。目的に応じて組み合わせるのが効果的です。

フレームワーク主な用途As-Is To-Beとの関係
As-Is To-Be分析業務プロセスの現状と理想の可視化基盤となるフレームワーク
BPMN(業務プロセス図)業務フローの詳細記述・共有As-Is/To-Beの業務フロー図として活用
UML(ユースケース図)システムの振る舞いの仕様化To-Beのシステム機能を詳細化する際に使用
SWOT分析組織・プロジェクトの内外環境整理As-Is分析の補完として使用
フィッシュボーン(特性要因図)問題の根本原因の特定As-Is分析でのボトルネック深掘りに活用
KPT(Keep/Problem/Try)振り返りと改善策の整理As-Is分析の補完・チームワークショップに活用

DX推進プロジェクトでの活用パターン

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進においては、As-Is To-Beフレームワークを次の段階で活用することが多いです。

  1. 経営戦略との接続フェーズ: 中期経営計画のKPIからTo-Beを逆算する
  2. 現状診断フェーズ: 業務棚卸・ITシステム棚卸でAs-Isを網羅的に記録する
  3. ロードマップ策定フェーズ: ギャップを複数フェーズに分割してDXロードマップを作成する
  4. 要件定義フェーズ: 各フェーズの開発スコープに対してAs-Is To-Beを適用する

要件定義でAs-Is To-Beが機能しない「5つの失敗パターン」

失敗①:As-Isを「問題のない理想形」として記述してしまう

現場に遠慮するあまり、または管理職からのヒアリングのみで作成した場合に起きます。実際の課題が記録されないため、ギャップが適切に特定できません。

対処法: 現場担当者へのヒアリングと実業務の観察(シャドーイング)を組み合わせ、「本当に困っていること」を引き出す設問を用意しましょう。

失敗②:To-Beが抽象的すぎて要件に変換できない

「業務効率化」「顧客満足度向上」といった抽象的なTo-Beしか定義されていないと、システム要件への落とし込みができません。

対処法: To-Beは「誰が・何を・どれくらいの時間で・どのような手順で行うか」というプロセスレベルで記述します。KPIも「削減時間・処理件数・エラー率」など定量的な指標で表現します。

失敗③:ギャップをすべてシステムで解決しようとする

業務設計や組織変更で解決できるギャップをシステム要件に入れてしまうと、開発コストと複雑性が不必要に増大します。

対処法: ギャップを「システムで解決」「業務設計で解決」「組織変更で解決」の3種類に分類するフィルタリングを行い、IT化が本当に必要なものだけを要件定義に含めます。

失敗④:関係者全員のTo-Be合意なしに要件定義を進める

経営層・IT部門・現場が異なる「あるべき姿」を持っている状態で要件定義を進めると、後から仕様変更が多発します。

対処法: To-Be設計はワークショップ形式で複数の関係者が参加して行い、成果物に全員がサインオフする合意プロセスを設けます。

失敗⑤:ギャップを一度に解決しようとする

すべてのギャップを1つのプロジェクトで解決しようとすると、スコープが膨大になり、プロジェクトが失敗するリスクが高まります。

対処法: ギャップを影響度・実現可能性でマトリクス評価し、フェーズ1・フェーズ2に分割します。「今回やること」と「今回やらないこと」を明文化することがスコープクリープの防止につながります。

【弊社事例】日本セック株式会社様 対談インタビュー

新規事業でプラットフォームを立ち上げる場合、要件定義の段階でAs-Is To-Beフレームワークを活用すると、「何をシステム化すべきか」が明確になります。

たとえば、中小製造企業向けのリソース・スキルシェアリングプラットフォーム「シェアプラ」を構築した日本セック株式会社のケースでは、新規事業立ち上げに際して、既存の自社業務(LED表示板の製造・販売)とシェアリングサービスのAs-Isを整理し、「企業同士が機器・スキル・販路を直接シェアできる状態」をTo-Beとして設計。

カスタメディアのベースプラットフォームを活用することで、ゼロベース開発よりも「最終的なサイトのイメージがつきやすい」状態で要件を固めることができたと語っています(事例詳細はこちら)。

このように、要件定義段階でTo-Beのイメージが共有されている状態を作ることが、開発後の手戻りを防ぐ最大のポイントです。

よくある質問

  1. Q. As-Is To-Beはどのフェーズで実施するのが最適ですか?

    プロジェクト立ち上げ直後から要件定義フェーズにかけて実施するのが最適です。企画段階でAs-IsとTo-Beの大枠を描き、要件定義フェーズでギャップを詳細化・優先順位付けするという2段階のアプローチが現実的です。開発が始まってからAs-Is To-Beを整理しようとすると、仕様変更のコストが大きくなるため注意が必要です。

  2. Q. As-Is To-Beフレームワークに向いている案件・向いていない案件はありますか?

    以下のような案件で特に効果を発揮します。
    ・複数部署にまたがる業務改善
    ・既存システムのリプレース・刷新
    ・DX推進に伴うゼロベースの業務設計
    ・新規事業のプラットフォーム開発

    一方、単一機能の小規模な改修や、すでに要件が明確な案件では、フル版のAs-Is To-Be分析まで行わずにユースケース記述やワイヤーフレームへ直接進む方が効率的な場合もあります。

  3. Q. As-Is To-Beの作成に適したツールはありますか?

    専用ツールは必須ではありませんが、次のようなツールが一般的に活用されています。
    業務フロー図の作成: draw.io(無料)、Miro、Lucidchart
    ドキュメント共有・合意形成: Confluence、Notion、Google Slides
    ギャップ管理・タスク化: Jira、Backlog、Asana
    ツールよりも「関係者全員が参照・更新できる状態にする」ことが重要です。Excelのみで管理して担当者の手元に留まっているケースはアンチパターンです。

  4. Q. ウォーターフォール開発とアジャイル開発で、As-Is To-Beの活用方法は変わりますか?

    基本的な考え方は同じですが、アジャイル開発ではTo-Beを「現時点のベストの仮説」として扱い、スプリントを通じて段階的に精緻化していくアプローチが一般的です。ウォーターフォール開発では開発前にTo-Beを確定させる必要があるため、より丁寧なギャップ分析とステークホルダー合意が求められます。

  5. Q. As-Is To-Beとギャップ分析の違いは何ですか?

    広義では同義として使われることが多いですが、厳密には以下のように整理できます。
    As-Is To-Beフレームワーク: 現状と理想を可視化する全体的な手法・思考の枠組み
    ギャップ分析(Gap Analysis): As-IsとTo-Beの差分を特定・分類・優先順位付けする具体的なプロセス
    つまり、ギャップ分析はAs-Is To-Beフレームワークの中の1ステップと捉えるのが正確です。

As-Is To-Beフレームワークを要件定義の「共通言語」にする

As-Is To-Beフレームワークは、現状と理想のギャップを構造的に整理することで、要件定義の精度を高め、開発後の手戻りを防ぐ実践的な手法です。

特にDX推進や新規事業のプラットフォーム開発では、要件定義段階でAs-IsとTo-Beを関係者全員が共有できる状態にしておくことが、プロジェクト成功の重要な鍵となります。

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