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AIで要件定義はどこまでできる?作業別の使い方と、発注者が決めること
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AIを使った要件定義とは、打ち合わせメモの整理や要件定義書のたたき作り、抜け漏れの確認といった作業を生成AIに手伝わせ、要件を早く固める進め方です。
AIに頼めば要件定義書ができあがると思われがちですが、何を優先し、どこまで作るかを決めて開発会社と合意するのは、これまでどおり発注者の仕事です。この記事では、要件定義の作業ごとにAIに任せる範囲、進め方の5ステップとプロンプト例、注意点とツールの選び方を解説します。
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目次
AIで要件定義はどこまでできる?
AIが得意なのは、情報の整理・下書き・抜け漏れの指摘です。判断と合意は人に残ります。 要件定義には「集める」「まとめる」「決める」の3種類の作業があり、AIが速くできるのは前の2つです。
要件定義そのものの進め方や決める項目は、「要件定義とは?進め方と決める項目、発注者が担う役割」で解説しています。
AIに任せられるのは「整理・下書き・抜け漏れの指摘」
生成AIは、ばらばらの情報を読み込んで形を整える作業を得意とします。たとえば、打ち合わせのメモから要望の一覧を作る、要望を「機能」「画面」「データ」などに分類する、要件定義書のひな形に沿って下書きを作る、といった使い方です。
もう1つの使い道は、抜けている観点を挙げさせることです。「この要件で、権限・例外・運用について考えていない点はありますか」と聞くと、見落としやすい項目を短時間で洗い出せます。たとえるなら、AIは「記録係と質問係を兼ねた助手」です。ただし、助手が出した案を採用するかどうかを決めるのは、業務を知っている人です。
開発の現場でもAIの活用は広がり始めている
AIを開発に使う動きは、まだ一部ですが広がりつつあります。IPA(情報処理推進機構)の「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」では、開発へのAI導入を意識している企業は、検討中・試行中を含めてユーザー企業で約2割、ベンダー企業で約4割とされています。
IPAのWebサイトでも、ソフトウェア開発での主な活用場面の1つに「対話型AIを用いた要件定義」が挙げられています。コードを書く場面だけでなく、その手前の上流工程でもAIが使われ始めていることがわかります。開発工程全体へのAIの組み込み方は、「AI駆動開発とは?」もご覧ください。
では、要件定義の中のどの作業をAIに渡せばよいのでしょうか。作業を細かく分けてみると、線を引く場所が見えてきます。
要件定義の作業別:AIに任せる・一緒に進める・人が決める
要件定義の主な8つの作業は、「AIに任せる」「AIと一緒に進める」「人が決める」の3つに分けられます。 分け方の基準は、間違えたときに業務や費用への影響が大きいかどうかです。

AIに任せやすい作業:整える・書き起こす
AIに任せやすいのは、元になる情報がそろっていて、結果を人がすぐ確かめられる作業です。打ち合わせメモの整理、確認すべき観点のリスト作り、要件定義書のたたき作りがこれにあたります。
これらは間違いがあっても、読めば気づきやすい作業です。そのため、AIに最初の形を作らせ、人が直す進め方が向いています。ゼロから書く時間を減らし、その分を確認と判断に回すのが、AIを使う主な効果です。
AIと一緒に進める作業:聞き出す・照らし合わせる
ヒアリング、要望から要件への整理、矛盾や抜け漏れの確認は、AIと人がやり取りしながら進める作業です。AIが質問や指摘を出し、人が答えたり採否を決めたりします。
コンサルティング会社のKPMGは、要件定義書の作成について「生成AIに完成した要件定義書を作らせることではなく、人がAIとの対話を通じて要件を整理し、定義の精度を高めていく点にあります」と述べています。レビューについても、あらかじめ決めたチェックの観点をAIに渡し、記載の不足や整合性を指摘させ、人は重要な判断に集中する分担を示しています。
※出典:KPMG「生成AIを活用した要件定義書作成・レビュー高度化のポイント」
人が決める作業:目的・優先順位・範囲・合意
人が決めるのは、何のために作るのか、どの機能を先に作るのか、どこまで作るのか、そして関係者の合意です。予算と期間、完成とみなす基準もここに入ります。
AIは一般論として「よくある優先順位」を示せますが、自社の事業の事情や社内の力関係までは知りません。決める責任を持つ人がいない要件定義は、AIを使っても進みません。 発注者と開発会社がそれぞれ何を決めるかは、「要件定義とは?」の役割分担の節をご覧ください。
分担が決まったら、実際にAIをどう使うかです。ここからは、発注者がChatGPTなどの対話型AIで進める場合の手順を見ていきます。
AIで要件定義を進める5ステップ
AIで要件定義を進めるときは、「前提を渡す→質問させる→整理する→たたきを作る→画面で確かめる」の順に進めます。 AIに要件を書かせるより、AIに質問させて人が答えるほうが、自社に合った要件になりやすいためです。

①目的と前提をAIに渡す
最初に、AIに「何のためのシステムか」と「変えられない条件」を伝えます。前提がないと、AIはどの会社にも当てはまる一般的な答えしか返せません。
渡しておきたいのは、次の5つです。
| 渡す情報 | 例 |
|---|---|
| システムの目的 | 紙で受けている申込みをWebで受け付け、処理の時間を減らしたい |
| 使う人 | 申込みをする取引先、受け付ける営業事務、承認する課長 |
| 今の業務の流れ | 申込書をメールで受け取り、担当者が基幹システムに手で入力している |
| 決まっている条件 | 予算の上限、公開したい時期、つなぐ必要がある既存システム |
| 今回は作らないもの | 請求書の発行は今回の対象外 |
今の業務の流れをまだ整理できていない場合は、先に現状とあるべき姿を書き出しておくと進めやすくなります。整理の方法は「As-Is/To-Beフレームワークによる要件定義と業務フロー」で解説しています。
②AIに質問させて要望を出し切る
次に、AIに要件を書かせるのではなく、足りない情報をAIに質問させます。 人は聞かれて初めて思い出すことが多く、この方法だと要望の出し漏れを減らせます。
プロンプトの例は次のとおりです。
あなたは業務システムの要件定義を支援する担当者です。
下の「目的と前提」を読み、要件を決めるために足りない情報を、
重要なものから順に10個まで質問してください。
1回に聞く質問は3つまでにし、私の回答を待ってから次に進んでください。
【目的と前提】
(①でまとめた5つの情報を貼り付ける)
回答はそのまま要望の記録になります。打ち合わせで関係者に聞いた内容をメモし、AIに貼り付けて続きを質問させる使い方もできます。
③要望を要件に分け、抜けている観点を確かめる
要望が出そろったら、AIに分類させ、抜けている観点を挙げさせます。「要望」は利用者がしたいこと、「要件」はそれをシステムでどう実現するかを決めたものです。
これまでの回答をもとに、要望を次の3つに分けて表にしてください。
・業務の要件(誰が、どの業務で、何をするか)
・機能の要件(画面・データ・処理)
・非機能の要件(性能・セキュリティ・運用・障害時の対応)
そのうえで、まだ決まっていない点、例外のとき(取り消し・差し戻しなど)の扱い、
利用者ごとの権限について、確認が必要な項目を挙げてください。
非機能の要件とは、速さや安全性、止まったときの対応など、機能以外の条件のことです。発注者が見落としやすい部分のため、AIに観点を挙げさせる効果が大きい部分です。
④要件定義書のたたきを作り、人が直す
整理した内容をもとに、要件定義書のたたきを作らせます。社内や開発会社に決まった書式がある場合は、その見出しを渡すと、そのまま使える形に近づきます。
これまでの内容を、下の見出しに沿って要件定義書のたたきにまとめてください。
推測で補った部分には【要確認】と付けてください。
(社内の要件定義書の見出しを貼り付ける)
【要確認】を付けさせるのがポイントです。
AIは足りない部分をもっともらしく埋めてしまうため、どこが推測かを見分けられるようにしておきます。
⑤画面にして確かめ、開発会社と合意する
最後に、要件を画面の形にして関係者で確かめます。文章の要件定義書だけでは、読む人によって思い浮かべる画面が違うためです。
試作の画面を見ながら「この項目は要らない」「この順番では使いにくい」と確かめると、合意の前に認識のずれを見つけられます。画面の試作の進め方は「プロトタイプ開発とは?」で解説しています。
手順どおりに進めても、AIならではのつまずきはあります。よく起きるものを4つ挙げます。
AIで要件定義をするときの4つの注意点
AIで要件定義をするときに注意したいのは、要件の膨らみ、前提の不足、入力する情報、文書だけでの合意の4つです。 いずれも、AIの出力を人が確かめる手順を入れれば防ぎやすくなります。
もっともらしい要件が増え、範囲が膨らむ
AIに「ほかに必要な機能は?」と聞くと、それらしい機能を次々に挙げてきます。1つずつはもっともでも、すべて取り入れると開発の範囲と費用が膨らみます。
AIが挙げた案は「候補」として扱い、採用するかどうかを人が決めましょう。「今回作るもの」「次の段階で作るもの」「作らないもの」の3つに分けて残すと、範囲が広がりすぎるのを防げます。
前提を渡さないと一般論になる
生成AIの答えは、渡した情報や聞き方によって大きく変わります。KPMGも、生成AIを使った開発の課題として「プロンプトによって回答が大きく変化する『出力の不確実性』」を挙げています。
前提を渡さずに「受発注システムの要件を出して」と聞くと、どの会社にも当てはまる一覧しか返ってきません。ステップ①の5つの情報を毎回最初に渡す、同じ質問を言い方を変えて2回聞き、違いが出た部分を人が確認する、といった工夫で、ぶれを小さくできます。
機密情報・個人情報を入れる前に確かめる
打ち合わせメモや顧客の一覧をそのままAIに貼り付ける前に、入力してよい情報かを確かめます。個人情報保護委員会は2023年6月に、生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する事業者に向けて注意喚起を出しています。
その中では、入力が利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認すること、本人の同意なく個人データを入力する場合は、そのデータが機械学習に使われないことなどを十分に確認することが求められています。AIに入れる前に、少なくとも次の点を確かめましょう。
| 確認すること | 見るところ |
|---|---|
| 社内でそのAIサービスを使ってよいか | 社内の生成AI利用ルール、情報システム部門 |
| 入力した内容が学習に使われないか | サービスの利用規約・設定(法人向けプランの条件など) |
| 個人情報が含まれていないか | 顧客名・連絡先などは消すか、仮の名前に置き換える |
| 取引先との秘密保持の約束に反しないか | 秘密保持契約の内容 |
※出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日、2026年10月21日確認)
文書だけで合意しない
AIを使うと、整った要件定義書を短時間で作れます。しかし、文書が整っていることと、関係者の考えがそろっていることは別です。

読みやすい文書ほど、全員が同じものを思い浮かべていると思い込みやすくなります。 ステップ⑤のように画面で確かめてから合意すれば、開発が進んでから「思っていたものと違う」と気づく事態を減らせます。
注意点を押さえたら、残るのは「どのAIを使うか」です。ツールは大きく3つの型に分けられます。
要件定義に使えるAIツールの3つの型
要件定義に使えるAIツールは、「汎用の対話型AI」「要件定義に特化したツール」「画面まで作るツール」の3つの型に分けられます。 先にどの型を使うかを決め、そのあとで個別のサービスを比べると選びやすくなります。
| 型 | 向く場面 | できること | 注意点 | まず確かめること |
|---|---|---|---|---|
| 汎用の対話型AI | まず試したい、小さな案件 | 質問・整理・たたき作り | 書式や観点は自分で用意する | 社内での利用可否と、入力内容の学習の扱い |
| 要件定義に特化したツール | 要件定義の件数が多い、書式をそろえたい | 要件定義書の作成・添削 | 費用がかかる。社内の書式に合うか | 無料で試せる期間、社内の書式への対応 |
| 画面まで作るツール | 関係者と画面で合意したい | 要件から画面を作り、確かめる | 作った画面をどこまで本番に使えるか | 作った画面やデータの引き継ぎ方 |
汎用の対話型AI:まず手元で試す
ChatGPT・Claude・Geminiなどの汎用の対話型AIは、追加の費用をかけずに始めやすい型です。この記事の5ステップも、この型で進めることを想定しています。
一方で、要件定義の書式やチェックの観点は自分で用意する必要があります。業務で使う前に、社内の利用ルールと、入力した内容が学習に使われない設定になっているかを確認しましょう。
要件定義に特化したツール:書式と観点をそろえる
要件定義に特化したツールは、要件定義書の作成や添削を目的に作られたサービスです。たとえば株式会社エクスモーションの「CoBrain」は、企画書や議事録、設計書から要件定義書を作成し、既存の要件文書を添削できるとしています。
要件定義を何件も進める部署や、文書の品質を一定にそろえたい場合に向いています。料金はサービスやプランによって異なるため、無料で試せる期間に、自社の書式で使えるかを確かめておきましょう。
画面まで作るツール:要件をその場で形にする
画面まで作るツールは、文章で決めた要件から画面を作り、関係者で確かめられる型です。ステップ⑤の「画面で確かめる」を早い段階で行えます。
注意したいのは、作った画面をどこまで本番のシステムに使えるかです。試作で終わるのか、そのまま開発につなげられるのかを、始める前に確かめておきましょう。なお、コードを書く作業そのものにAIを使うツールは、「コード生成AIとは?」で整理しています。
要件を画面で確かめながら決めるなら:カスタメディアの支援
要件を文書だけでなく画面で確かめながら決めたい場合は、画面まで作れるツールと、開発の進め方を相談できる相手の両方があると進めやすくなります。 AIで要件を早くまとめても、社内に開発に詳しい人がいないと、そこから先で止まりやすいためです。
弊社の「カスタメディアプラットフォーム」では、AI駆動セルフ開発ツール『S-MASE』を使い、プロンプトからインフラ・データベース・画面を自動で作成できます。要件定義の段階で画面を見ながら関係者と確かめられるため、文書だけで合意したときに起きやすい認識のずれを減らせます。
開発はカスタメディアが伴走して進めます。900件以上の構築実績をもとに、要件の整理から公開後の改善まで相談できます。
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よくある質問
Q. AIだけで要件定義書は作れますか?
たたきまでは作れますが、そのまま完成版にはできません。 優先順位や作る範囲の判断と、関係者との合意は人が行う必要があります。
Q. 無料のChatGPTを業務の要件定義に使ってもよいですか?
社内の利用ルールで認められているか、入力した内容が学習に使われない設定かを確かめてから使いましょう。顧客名や連絡先などの個人情報は、消すか仮の名前に置き換えて入力します。
Q. 要件定義に使えるプロンプトの例はありますか?
この記事の5ステップの中で、質問させる・分類させる・たたきを作らせる3つの例を紹介しています。どの例でも、最初にシステムの目的と前提を渡すことが共通のポイントです。
Q. AIを使うと、開発会社との役割分担は変わりますか?
何を作るかを決めて合意するという発注者の役割は変わりません。 変わるのは、要望の整理や文書の下書きにかかる時間が短くなる点です。役割分担の基本は「要件定義とは?」で解説しています。
Q. 「AIシステムの要件定義」とは違うのですか?
違います。この記事は「AIを使って要件定義を進める方法」を扱っています。AIを組み込んだシステム(チャットボットなど)を作るときの要件定義では、AIに何をさせるか、精度をどう評価するかといった別の項目も決める必要があります。
まとめ
AIを使った要件定義では、打ち合わせメモの整理、観点の洗い出し、要件定義書のたたき作りをAIに任せ、ヒアリングと確認はAIと一緒に進めます。目的・優先順位・範囲の決定と合意は、これまでどおり発注者が担います。
進めるときは、前提を渡してからAIに質問させ、推測で補った部分に印を付けさせ、最後は画面で確かめてから合意しましょう。個人情報や機密情報を入れる前には、社内ルールと利用規約の確認も欠かせません。
要件を画面で確かめながら、開発まで進めたい方へ
カスタメディアでは、AI駆動セルフ開発ツール『S-MASE』を使ったシステム開発を支援しています。「AIでまとめた要件を、画面で確かめながら形にしたい」「要件定義から開発まで、どこを社内で決めればよいか相談したい」といったご相談をお受けしています。900件以上の構築実績をもとに、進め方からご提案します。
