マーケティングBLOG

人的資本経営ツールの種類と選び方|KPI設定までわかる実践ガイド
導入実績800サイト以上!!
「カスタメディア」の事例ダウンロードは
こちら
人的資本経営の実践には、人材データの収集・可視化・分析・開示を支えるデジタルツールが欠かせません。しかし、タレントマネジメントシステム・HRMSなど多種多様なツールが存在しており、自社に合ったものを選ぶのは容易ではありません。
この記事では、人的資本経営に必要なツールの種類と選び方、KPI・指標の設定方法、中小企業でも実践できる導入ステップまでを体系的に解説します。
⇒【短納期・低価格】個人のノウハウを組織の資産へ変え、自走する組織を構築するプラットフォーム「社内資産シェア」
目次
人的資本経営とは

人的資本経営とは、人材を「コスト」ではなく「投資対象となる資本」として捉え、人材の価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営手法です。
経済産業省は「人的資本経営~人材の価値を最大限に引き出す~」として積極的に推進を進めており、2023年3月期以降、有価証券報告書への人的資本情報の開示が上場企業に義務付けられました。この義務化により、人材データの整備・可視化・開示は経営上の急務となっています。
26年3月期からの開示拡充に対応する実務の手順はこちらの記事で解説しています。
なぜ人的資本経営にツールが必要か
人的資本経営を実践するには、以下のプロセスを継続的に回す必要があります。
| ステップ | 内容 |
| データ収集 | スキル・評価・研修・エンゲージメント・離職率などの人材データを一元管理する |
| 可視化・分析 | 収集データをKPIに変換し、経営戦略との連動(人的資本の活用状況)を確認する |
| 施策実行 | データに基づいて、人材育成・最適な配置・採用計画などの施策を実行する |
| 情報開示 | 投資家やステークホルダーへ、標準化されたフォーマットで価値向上を報告する |
これらを手作業のExcel管理で対応しようとすると、データの精度・更新頻度・集計コストに大きな限界があります。専用ツールを活用することで、収集→分析→開示のサイクルを自動化・効率化し、経営判断のスピードと精度を高めることができます。
人的資本経営ツールの種類と機能比較
人的資本経営を支えるツールは、機能・目的によって大きく5つのカテゴリに分類できます。
| カテゴリ | 主な目的 | 対象業務 | 向いている企業規模 |
|---|---|---|---|
| タレントマネジメントシステム | 人材の可視化・育成・配置最適化 | 人材管理・評価・後継者育成 | 中規模〜大規模 |
| HRMS / HCM | 人事データの一元管理・基盤整備 | 労務・給与・人材データ統合 | 全規模 |
| エンゲージメント測定ツール | 組織健全性の定期測定 | サーベイ・分析 | 全規模 |
| LMS(学習管理) | 人材育成・リスキリング推進 | 研修・学習管理 | 全規模 |
| 情報開示支援ツール | 投資家向け開示資料の作成 | レポーティング | 上場企業・開示義務企業 |
カテゴリ①:タレントマネジメントシステム(TMS)
従業員のスキル・経験・評価・キャリア志向などの人材情報を一元管理し、適材適所の配置・育成計画の立案・後継者育成を支援するシステムです。人的資本経営の中核をなすツールで、月間600件超の検索が発生するほど関心が高まっています。
主な機能:
- スキルマップ・人材プロファイルの管理
- 人事評価・目標管理(MBO・OKR)
- 後継者計画(サクセッションプランニング)
- 人材配置シミュレーション
- 研修・学習履歴の管理
代表的なサービス例: カオナビ、タレントパレット、SmartHR(タレントマネジメント機能)、SuccessFactors(SAP)
カテゴリ②:HRMS(人事管理システム)/ HCM(ヒューマンキャピタルマネジメント)
給与・勤怠・入退社などの労務管理に加え、人材データの一元管理・分析機能を備えた統合型システムです。人的資本経営の基盤となる「データ基盤」として機能します。
主な機能:
- 給与・勤怠・労務管理
- 組織図・人員構成の可視化
- 人材データのダッシュボード化
- 法定帳票・開示資料の自動生成
代表的なサービス例: SmartHR、COMPANY(Works Human Intelligence)、HRBrain、Workday
カテゴリ③:エンゲージメント測定ツール
従業員満足度・エンゲージメント・心理的安全性などを定期的に測定し、組織の健全性を数値化するツールです。人的資本の重要指標である「従業員エンゲージメント」の継続的な把握に活用されます。
主な機能:
- パルスサーベイ(短周期のアンケート)
- eNPS(従業員ネットプロモータースコア)の計測
- 組織別・階層別のスコア分析
- 経年変化のトレンド表示
代表的なサービス例: Wevox、Geppo、EX Intelligence、サーベイツール内蔵型HRMS
カテゴリ④:学習管理システム(LMS)
研修・eラーニング・資格取得などの学習コンテンツを提供・管理し、人材育成の効果測定を行うシステムです。リスキリング推進の文脈でも注目度が高まっています。
主な機能:
- eラーニングコンテンツの提供・管理
- 受講履歴・習熟度の追跡
- スキルギャップの可視化
- 外部コンテンツとの連携(Udemy Business等)
代表的なサービス例: moodle、Cornerstone OnDemand、totara、Schoo for Business
カテゴリ⑤:人的資本情報開示支援ツール
有価証券報告書や統合報告書への人的資本情報の記載を支援する専門ツールです。ISO 30414などの国際標準に対応したレポーティング機能を備えているものもあります。
主な機能:
- 人的資本KPIの集計・ダッシュボード化
- 開示基準(ISO 30414・GRI等)への対応
- 投資家向けレポートの自動生成
- 他社比較ベンチマーク機能
代表的なサービス例: 専用の開示支援ツールのほか、タレントマネジメントシステムの開示機能を活用するケースも多い
人的資本経営で設定すべきKPIと指標
ツールを導入する前に、「何を測るか」を明確にすることが最も重要です。経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」では、人的資本経営の3つの視点と5つの共通要素が示されており、これをもとにKPIを設計することが推奨されています。
人的資本経営の3つの視点・5つの共通要素
3つの視点:
- 経営戦略と人材戦略の連動
- As-Is(現状)とTo-Be(あるべき姿)のギャップの定量把握
- 企業文化への定着
5つの共通要素:
- 動的な人材ポートフォリオ
- 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
- リスキリング・学び直し
- 従業員エンゲージメント
- 時間や場所にとらわれない働き方
開示・管理で使われる主なKPI一覧
| カテゴリ | KPI・指標の例 |
|---|---|
| 人材育成・スキル | 研修時間(人当たり)、スキルギャップ充足率、リスキリング受講率 |
| エンゲージメント | eNPSスコア、従業員満足度、パルスサーベイスコア |
| ダイバーシティ | 女性管理職比率、女性採用比率、外国人・中途採用比率 |
| 人材の流動性 | 自発的離職率、社内公募充足率、内部昇進率 |
| 組織健全性 | 有給取得率、残業時間、心理的安全性スコア |
| 採用・定着 | 採用充足率、新卒3年以内離職率、採用コスト |
| 労働生産性 | 一人当たり売上高・付加価値、人件費率 |
これらのKPIをすべて一度に整備しようとするのは現実的ではありません。自社の経営戦略上の優先課題に紐づく3〜5個のコアKPIを最初に絞り込み、ツールで測定可能な状態を作ることが実践のファーストステップです。
人的資本経営ツールの選び方|4つのポイント

ポイント①:自社の「開示義務の有無」で必要機能を絞る
上場企業(有価証券報告書の開示義務あり)か非上場・中小企業かによって、必要なツール機能は大きく異なります。
- 上場企業: 開示基準(ISO 30414準拠など)への対応機能、データ集計・レポート自動生成機能が必須
- 非上場・中小企業: まずは人材データの一元管理とエンゲージメント測定から始め、段階的に機能を拡張する
ポイント②:既存システムとのデータ連携を確認する
すでに給与システム・勤怠管理システム・採用管理システムを導入している場合、新しいツールとのAPI連携・CSV取り込みが可能かを必ず確認します。データが分断されたままでは、人的資本経営の「統合的な分析」が実現できません。
ポイント③:ユーザー(現場・従業員)の操作性を重視する
エンゲージメントサーベイやスキル申告など、従業員が直接入力するデータが多いツールほど、UIの使いやすさがデータ品質を左右します。管理者目線だけでなく、「従業員が継続して使えるか」という視点で評価しましょう。
ポイント④:初期費用・ランニングコストを複数社で比較する
人的資本経営ツールの費用は、月額数万円〜数百万円と幅が広く、従業員数・機能範囲・カスタマイズの有無によって大きく変動します。概算の目安として以下を参考にしてください(あくまで参考値。実際の導入前に必ず複数社へ見積もりを取ることを推奨します)。
| ツール種別 | 月額費用の目安(従業員100〜500名規模) |
|---|---|
| タレントマネジメントシステム | 10万〜100万円程度 |
| HRMS(クラウド型) | 3万〜30万円程度 |
| エンゲージメントツール | 3万〜20万円程度 |
| LMS | 5万〜30万円程度 |
| 開示支援ツール | 個別見積もりが多い |
中小企業でも実践できる|人的資本経営の導入ステップ
「上場企業の話」と思われがちな人的資本経営ですが、中小企業にとっても採用競争力・組織活性化・生産性向上の観点で重要な経営課題です。大規模なシステム投資から始める必要はなく、以下のステップで段階的に取り組むことができます。
ステップ1:現状の人材データを棚卸しする(ツール不要)
まずExcelや既存の人事システムで管理しているデータを棚卸しし、何が測れていて何が測れていないかを把握します。「スキルが可視化されていない」「離職率しか追えていない」など、自社のデータ空白地帯を特定することが出発点です。
ステップ2:コアKPIを3〜5個に絞って定義する
経営戦略のどの課題(採用強化・定着率改善・生産性向上・女性活躍推進等)に紐づくKPIかを明確にし、まず3〜5個に絞ります。「計測できるもの」から始め、後から追加していくアプローチが現実的です。
ステップ3:エンゲージメント測定ツールからスタートする
初期投資を抑えながら人的資本経営を始めるなら、エンゲージメント測定ツールが最もコストパフォーマンスが高い選択肢です。月数万円から導入でき、従業員の声をデータ化することで「組織の現状(As-Is)」が可視化され、次の施策の根拠となります。
ステップ4:データが蓄積されたらタレントマネジメントシステムへ拡張する
エンゲージメントデータと人事評価データが一定量蓄積されたら、タレントマネジメントシステムを導入してスキル管理・育成計画・配置最適化へと機能を拡張します。
ステップ5:社内コミュニティ・ナレッジ共有の仕組みを整える
ツールによるデータ管理と並行して、従業員同士がキャリアや学びを共有し合えるコミュニティ・プラットフォームを整備することも人的資本経営の有効なアプローチです。
【弊社事例】デジタルツールを活用した人的資本経営の実践例
事例:JR東日本「PeerCross」| 女性活躍データを可視化するキャリア支援プラットフォーム

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は、JR東日本グループの新事業創造プログラム「ON1000」で採択されたワーキングマザー向けキャリア形成支援サービス「PeerCross」を立ち上げました。
同サービスは、大手企業のワーキングマザー同士が価値観・境遇の近い人材とマッチングし、1on1でキャリア相談ができるプラットフォームです。記事内でも言及されているとおり、「女性活躍・DE&I推進に関する数値は人的資本の重要指標」であり、投資家や採用人材へのアピールにも直結する領域です。
カスタメディアのプラットフォーム構築システムを活用して構築されたこのサービスは、累計80組160名のマッチングが成立し、9割以上の参加者から高評価を獲得。「女性管理職比率の向上」という人的資本KPIの達成に向けた施策として機能しています(事例詳細はこちら)。
このように、人的資本経営の実践は「人事システムの導入」だけにとどまらず、従業員が主体的に参加できるコミュニティプラットフォームの活用も有効なアプローチです。
人的資本情報の開示対応|押さえておくべき基準
ISO 30414(人的資本レポーティングの国際標準)
2018年に策定された国際標準規格で、人的資本情報の開示に関するガイドラインを提供しています。58の指標が定められており、日本企業の自主開示にも広く参照されています。主な指標カテゴリは「コンプライアンス・倫理」「ダイバーシティ」「リーダーシップ」「組織文化」「採用・離職・定着」「生産性」「安全・健康・幸福」「スキル・能力開発」などです。
有価証券報告書への記載(上場企業に義務)
金融庁の企業内容等の開示に関する内閣府令改正により、2023年3月期以降の有価証券報告書では「人材の多様性確保を含む人材育成の方針及び社内環境整備の方針に関する指標・目標・実績」の記載が義務化されました。具体的には女性管理職比率・男性育休取得率・男女賃金格差の3指標が必須開示項目となっています。
人的資本可視化指針(経済産業省)
「人的資本可視化指針」は、上場・非上場を問わず企業が自社の人的資本情報を開示・活用するための実践的なガイドラインです。開示すべき項目と記載例が示されており、ツール選定の際の参照基準としても活用できます。
よくある質問
Q. 人的資本経営のツール導入は、まず何から始めればよいですか?
最初のステップとして最も現実的なのは、エンゲージメント測定ツールの導入です。コストが低く(月数万円〜)、従業員の声をデータ化することで「現状のAs-Is」が可視化でき、経営陣への報告にも使えます。その後、蓄積データをもとにタレントマネジメントシステムへ段階的に拡張するアプローチが失敗しにくいです。
Q. 中小企業でも人的資本経営ツールは必要ですか?
開示義務は現状、上場企業に限られますが、中小企業においても採用競争力の強化・離職率の改善・生産性向上の観点で人的資本経営は有効です。特に採用難の業界では「人材育成への投資」や「働きやすい環境」の可視化が求職者へのアピールになります。まずはExcel管理の限界を整理し、エンゲージメントサーベイなどの低コストツールから始めることをお勧めします。
Q. タレントマネジメントシステムとHRMS(人事管理システム)の違いは何ですか?
HRMSは給与・勤怠・労務などの「管理業務の効率化」を主目的とするシステムです。一方、タレントマネジメントシステムは「人材の潜在能力を最大限に活用する」ことを目的としており、スキル可視化・育成計画・後継者育成・配置最適化などの戦略的な人材マネジメント機能に特化しています。近年はHRMSにタレントマネジメント機能を統合した「HCM(ヒューマンキャピタルマネジメント)スイート」も増えており、一体導入するケースも多くなっています。
Q. 人的資本経営ツールの導入にかかる期間はどのくらいですか?
ツールの種類と規模によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。エンゲージメントツールなどSaaSツールは最短1〜2週間での稼働が可能なものもあります。タレントマネジメントシステムは要件定義・データ移行・社内展開を含めると3〜6か月、大規模なHCM導入では6か月〜1年以上かかるケースもあります。現場への定着には導入後の継続的なサポート体制が重要です。
Q. 人的資本経営のKPIは何個設定すればよいですか?
最初は3〜5個のコアKPIに絞ることを強くお勧めします。多くのKPIを一度に設定すると、測定・改善のPDCAが回しきれなくなります。自社の経営戦略上の最優先課題(例:離職率改善・女性活躍推進・スキル底上げ)に直結する指標を選び、「ベースライン(現状値)→目標値→達成期限」を明確にした上でツールで追跡できる状態を作ることが重要です。
人的資本経営ツールを「戦略の実行エンジン」として活用する
人的資本経営は、ツールを導入すれば完成するものではありません。「何を達成したいか(To-Be)」という経営戦略に基づいてKPIを設計し、ツールはそのKPIを測定・改善するための「実行エンジン」として活用することが重要です。
人的資本経営を自社の競争優位につなげるためには、デジタルツールの整備と並行して、従業員が主体的にキャリアを形成・共有できる「場」の設計も有効です。社内コミュニティやキャリア支援プラットフォームの構築に関心がある方は、ぜひカスタメディアにご相談ください。人的資本経営の実践を支えるプラットフォーム設計の段階からご支援しています。
